2012年9月22日土曜日

2006-07-12 同じ地球上での惑星アルカナル 編集CommentsAdd Star


ネパールの政治と人権 (世界人権問題叢書)
このブログを書くときに引用したストルガツキーの『神様はつらい』での惑星アルカナルを地で行くような行き詰まった状況にある国、現代ネパール。
90年代のボスニアや今のダルフールなどと違って悪玉を槍玉に挙げられる単純な構図ではない。
王室もダメ、(民主化を担ってきた)政党もダメ、革命勢力の毛派もダメというどん詰まりな状況。
紛争後のコソボリポートのように、世界の関心の向け方のベクトルのずれを糾弾するというモノイイでもない。
何しろ、世界中が無関心な紛争だったのだから。ある種の政治的ベクトルのお持ちの人が好む大国の横暴というクリシェも通用しない。
毛派はインドの極左派 ナクサライトの影響を受けているとはいえ、中国の支援もインドの容喙も国王独裁の側にも、反乱毛派の側にも確認されない。
まあ、どうしても外国人のレポートというのは悪い意味でのジョン=リード的アンガージュマンに陥ってしまいがちだ。(高校のころ見た『レッズ』は秀作だったが、あの映画の中で2度流れるインターは根無し草インテリの悲哀をかもし出していた)
そのような中で、文筆を志す30代の感受性豊かな有産階級のネパール女性がフィールドワーク的にカトマンズから毛派が支配する農村までレポートを行なう。この女性の博識、文才はただものではない。
単なるフィールドワークではなく、2世紀にわたる王室の歴史(暗殺や腐敗がいっぱい)、民主化運動の堕落、などのレポートも素晴らしく質が高い。
その他にも、
貧しい第三世界では、西側NGOに雇われることが、現地においては出世の一表現と看做されることなどが伺える。
明石書店は、世界の教科書シリーズや、去年読んだ『世界の奴隷制の歴史』など、学術書、参考文献としての良質出版社としての性格が強いが、この本では原文も訳も良かったのだろう。良き小説としての高みにまで昇っている。
第3世界ルポルタージュというべき水準を超えている。
出版は2006年2月。税抜き4000円の結構高い書籍ゆえおいそれとは購入できないだろうが、(分厚いサイズの多い明石書店の出す本ではこれでも安い方)、私のブログを読んでくれている人は、お使いの公立図書館の蔵書ネットで検索を掛けてみられることをお勧めする。

仕切りなおしの為に
2年前出版とは少し古いが、しかし歴史と挿話が豊富なビジネス書は大好きなので。これを読んで元気を出そう。

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