2012年9月23日日曜日

2007-04-09 嫌いな言葉 警戒してしまう言葉 編集CommentsAdd Star


ミリタリズムの歴史より引用③
ノーブレス・オブリージ、この言葉は特権なかんずく世襲的特権を正当化するものとして、私の立場からいえば「敵陣用語」である。
中世以来の「戦うヒト」「祈るヒト」「耕すヒト」の3身分制を淵源とすることば。この言葉を嬉々として語る連中があまりに多いのにはうんざりさせられる。そして、その際の実証(戦うときというのが何時返済されるか判らない手形のようなものだから実例は少ない)として頻繁に挙げられるのが、第一次世大戦でのイギリスのパブリックスクールのジェントリ層・貴族層が高い戦死率を示した事例。
私はその真偽を知らない。ただ、イギリスにおいては、戦争の進展とともに、所得税相続税ベヴァリッジ報告といった、社会史主義的な再分配の制度が進展したことからみて、この高貴なる階級が、国事多難な折に身を捨てるという図式は完全には信用しがたい。
それに、貴族層が、平時の大見得を裏切った実例も無いわけではない。

 それゆえにドイツでは、封建制以後の貴族層に関する古き物語は、軍政史のなかに消えることなく続いていた。だが、この貴族層が第一次大戦の指導上で果たした役割は、期待にかなったものではなかった。大戦では戦死者数は全体としては名誉ある高い比率を示したが、貴族の場合には、あまりに多くの貴族が騎兵将校となっていたので、最大限まで実戦に参加することはなかった。そして騎兵隊ならびに騎兵将校たちが蒙った戦死者数が僅少であったことは、彼らが戦時中にわずかな貢献しかしていなかったことを明々白々に立証していた。たとえば、もっとも高名なドイツ近衛騎兵諸連隊における将校386名のうち―彼らのほとんどが貴族―、43名しか戦死しておらず、そのうち9名だけが所属連隊の将兵とともに戦死したにすぎなかった。
C.W.ゲスラー 『Offizere und Offizerekorps der alten Armee in Deutschland』(1930)70Pより

TezTez 2007/04/12 01:07 こんにちは。
オーウェルに言わせると、当時の英国の支配階級は善良で愛国的だったということです。ところが彼らは19世紀以降は有産階級・金利生活者になってしまっていて、生産的な役割を担わなくなったのだが、善良であるがゆえに自分たちを寄生虫だと思いたくなくて「愚鈍への逃避」に走った、と言っていました。
それで、アホだから新しい戦争に対処できないと批判していますが、例によって戦争では進んで死ぬことを以て英国支配階級は「道徳的にはかなり健全」な連中だと言ってました。
そして「彼らは悪人ではない。と言って言い過ぎならば、かならずしも悪人ではない。ただ手のつけられないばかなのだ」と結論しています。オーウェルに言わせると、英国の戦争はバカな支配者のせいで負けて、中産階級と労働者階級が死に物狂いで挽回するというものであるそうで、そういう意味では労働者階級に依存するところが歴史上もっとも大きくなった時、十分な見返りを用意して労働者階級に協力を求めたのでしょう。
それにしたところで、ナチの総動員体制に対抗するためのもので、敵の力を思い知らされて初めて福祉に手をつけたというところでしょうが。国家社会主義に立ち向かうにはある程度社会主義的な政策が必要なはずですが、オーウェルいわく支配階級はそれを「理解できない」。
愛国者で社会主義者のオーウェルの支配階級観はかなり複雑です。自分がイートン出でイートン的行動様式を内面化させていたせいもあるでしょうけれども。
一方日本で「ノーブレス・オブリージュ」を語る連中は氏素性は明らかではないし、何より試験で成り上がったり偉くなっている連中なので、決して無能ではないですが、バカでないがゆえにしばしば民を欺きます。全然ノーブルではないと思いますね。
長々と失礼しました。

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