2012年6月13日水曜日

高坂正尭講演 (新潮カセット講演)(1)

[]高坂正尭教授の講演CommentsAdd Star

高坂正尭教授の90年~91年の講演テープを草加市立中央図書館を通じて発見しました。私は保守ではない、保守では決してありませんが、その語り口、視点には魅せられることこのうえもありません。賛嘆の気持ちが高じて、アル・パチーノの演説とならび、通勤途上のICレコーダーに録音しました。以下は不完全なテープ起こしです。
私自身は、世界史ではUSPD(ドイツ独立社会民主党)、スイス社会党、カナダ新民主主義党に好感を持っています傾向の人間です。
高坂正尭
色字拡大したところは、味のある部分でもあり、なぜ私が何度も反芻するのか後でコメントを付すことができれば良いと考えます。
そのことをまず私は申し上げたいと思うんですね。
それにも関わらずね、ちょっと違う意味でも軍備の負担というのはアメリカにとって大きかったし、冷戦の負担は大きかったと、いうふうに私は思います。軍備の負担のどこが大きいかといいますと………。うーん、アメリカに特殊なケースもあるんですけど、技術の発達を軍需産業が行うようになっちゃった。そして、軍需産業に優秀な人材が集まるようになった。………で人材の無駄遣いというのは非常に大きいんですね。それに、困ったことですけどね。そらね、特殊な製品を造るほうが大衆製品を造るよりも遥かに面白いですよ。………そら、もうものすごく普通の自動車造るよりはF1造ったほうが面白いもの。セスナ造るよりはジェット機造った方が面白いですよ、そら、造るほうからすれば。………。同じように軍需産業が作る製品のほうが面白いでしょうからね。だから、相当立派な技術者がそこに行ったと。………。で、色んな数字がありますけれども、アメリカの上等の大学出た技術者の3割くらいが軍需産業に行く、という説がございます。大きいんですよね、これ。そのマイナスが非常に大きい。で、アメリカの産業がおかしくなったのはその所為だということができるかと思います。だけど、それ以上に大きいのがね、そりゃアメリカの政治システムその他を変えたということでしょうね。それが大きいんですね。つまり、アメリカの軍隊あるいは軍事的な考慮そういうものに対してあまりにも大きな影響力を与えてしまったと、与えすぎたと、いうところがあるんだろうと思うんです。こりゃ、非常に難しい問題なんで………。安全保障とか国防ってとっても大事なもんです。だからそれに携わる人に対しては然るべき尊敬を与えなければならない。………。でも、これはね、平常にはそう役に立たないものの考え方なんですね。で、人間っていうのは平常でない時のことを考える人が何人かはいます。必要であります。………。だけど、その平常でないことばっかり考える人があんまり強くなるのも困るんだな。で、アメリカではそういう風なことが起こったのではないだろうかと、いう風に私は思います。特に、アメリカの場合は伝統的に軍需産業中心に技術を伸ばしたこともなかったし、政治の中で軍隊が果たす役割というものも小さい国でした。戦後の日本と同じように民需中心で伸びてきたのがアメリカなんですね政府は小さくて、そして軍隊その他の権力構造が弱い、というのがアメリカの特筆なんですね。………。そこに、私はアメリカの活力があったような気がします。………。そこのところが、やっぱりね、………なくなってしまう。そういう欠点があったんじゃなかろうかと。そういう風に思うんですね。大体ね、アメリカほど大きい国で、なぜ人びとが自由に行動できたかと、いうと、普通には中間集団と言いますけれど、州とか各種の自発的な団体とか、そういう風なものが、非常に強くて、それが自立性を持っていたからだという風に言われます。ところが、あんまり真ん中の政府が強くなりますとそういうのなくなるでしょ。………。それが悪い、と。この説明はなかなか難しいんですけど。要するに、アメリカらしい、それぞれが自由で、そしてバラバラに行動しながらバランス取るというカッコウの政治形態が、冷戦の時にはなかなかやりにくいことになっちゃったと。そこに、活力が枯れる要因があったのではなかろうかという風に思われます。それに、もう一つは、これは一番基本かもしれませんけども、アメリカが対抗した相手の共産主義というのが、また変わったやつだった。これは、違う世界、違う体制があるよ、というビジョンを掲げる国であった。したがって、争いは普通の戦争ではなくて、何が正しい体制かを巡るものになっちゃった。イデオロギー闘争というものになっちゃった。そうしますとね、政府とか、知識人とか、そういう風なものについても、あまりにも動員がかかりすぎるようになるんですね。こりゃ、しょうがないことなんです。イデオロギー体制でソ連に負けちゃならんということになれば、やっぱり、冷戦にいかにして勝つかを考えます。必要なことであったと私は思います。だけど、同時にね、それがアメリカの良さである、何でも言うと。………。その点を無くなしてしまった事がありますね。特にね、そのアメリカの大学なんていうのは、ほんとに色んな人が社会のためになろうがなるまいが好きなことを言ってるのがアメリカなんですね。………。ところが、そういう非常に面白い考え方を生み出す自由というものがなくなったとすれば、やっぱりそれはアメリカの所為じゃないでしょうか。困ったことにこれまた不可避のことがあってね。そういうときに少数の人間が頑張ってアメリカの政府を批判しても、………、ダメなんです。………。だって少数のものがヒロイックに批判すればそれはまた変わり者になってしまって、これもホンモンじゃないんですね。………。変わった意見というのはね、その人が悲壮ぶることなく、すらーっと、こう言わにゃいかんのですね。ところがアメリカの冷戦体制のもとで、冷戦体制は悪いと言いますと、これは悲壮ぶって世の中の体制はこうだと、自分は断固として反抗すると………、肩に力が入ったんじゃ変わり者でもなんでもなくなるんです。これは、ただの意固地なだけでな。魅力がなくなりますからねだから、そこらのところがね。そのアメリカの活力というものを奪った素地であったのではなかろうかと、いう感じがします。それになんというても大きいのが2つの問題でして、1つがベトナム戦争です。………。戦争には失敗もあります。特に、勢力圏を巡る戦いでしたから、したがって、それは植民地戦争とは似てくるところがあった。で、アメリカの場合、やっぱりね、ベトナム戦争というのはその、大きな間違いであった。これがアメリカの社会に非常なショックを与えましたね。………。特にね、色んな意味でベトナム戦争の頃はアメリカの曲がり角の頃だった。それは世代問題を見ても判ります。ご存知かもしれませんけども、アメリカは戦後出生率が非常に上昇しました。これは、どこの国でもそうですよね。どこの国でもそうですが、アメリカの場合は1945年から1960年まで出生率が15年高いんです。もっと大事なことは1930年代のアメリカの出生率が大不況ということもあって、低いです。日本の場合ですとね、1930年代の出生率が高いですよね、戦争前ですから。それから戦後のベビーブームは5年でしょ。………。そすとね、かわいそうに、日本の団塊の世代というのはそこを取れば数は多いけど、社会の全体的な中から見れば圧倒的に強くならないんですよ。………。かわいそうではありますよ。そのものは。アメリカは逆。前は少なくて、あと15年かたまりがある。これは社会の非常に大きな影響力になります。さてね、その戦後生まれた世代が二十歳になったころ、正確に言うと21になった頃かな。まあ、20歳ころかな。1966年に65年かも、御免なさい1965年にアメリカはベトナム戦争に激しく介入します。そして、それは動考えても惨めな失敗ではありました。その結果ね、この世代は色んな意味で父親の世代に対して猛反発を始めます。そりゃ、もう当然起こるんだよ。普通でも起こるんです。前の世代が一生懸命働いて経済成長したときに、次の世代はなんとなくこれを胡散臭い目で見るものであります。だって、一生懸命努力して、つましく行動して、それはえらいけどね。一生懸命働いてつましく生活してそれはえらいけどね。でも、そこから返ってくるのは所詮カネでしょ。悪く言えばな。親って言うのは、子っていうのは親に反発しますから。あれだけえらそうな事いうて、あれだけよく働いて、それで一体なんだと。ちょっと金持ちになっただけじゃないかと。ちょっと金持ちになるのが大変なんですけども。ちょっと金持ちになったやつを後から見れば、ちょっと金持ちになっただけじゃないかと、こう思いますよね。もう少し別の価値は探し求められないだろうかと。そう思いますよね。その時期にね、ベトナム戦争で親の世代が失敗したわけです。そうすると、正義だの、サービス(公務)だの、奉仕だの言うとって、一体なんちゅうことしてくれたんだと………。で、こんな結果になるならピューリタニズムというのかな、良く働いて、つましい生活をして、そしてアメリカの理想のために尽くすと意味がないじゃないかと………、と言うことになりますね。だから、反抗の時節になっていて、その反抗する人々の数も増えていて、そのときにベトナム戦争やっちゃったわけですね。だから、最悪の時期にやったわけですよね。で、それからあとのアメリカの社会はほんとにいっぺんに悪くなります。で、社会が悪くなったというのは、色々悪くなったところも悪くなっていないところもあるかもしらんし、色んな評価が出来るでしょう。だけど、間違いないことは貯蓄率は低下しました。だって、普通若い子たちは親たちの様によく働いて、無駄遣いをしないという価値観をかなぐり捨てたんですから、気にしないですよ。で、アメリカの貯蓄率は低下したわけです。貯蓄率が低下しますと間違いなしに将来向けの投資はできません。生産性はあがりません。だから、追いつかれることになったわけですね。だから、社会的な問題は別にして、もですよ。僕は、案外社会的な問題も多いと思います。アメリカのニューヨークなんかに行くと、大きなマンション、必ず門番がいますよね。ものすごい人材のムダですよ、あれ。ありがたいことに、日本要らんもんなあ。地下鉄もたったふたりで運転してるでしょ。車掌と運転手で。あんな、危ない。ただ、誰も危ないと思わんだけの話でな、ありがたいことに。安全保障のコストってすごいんですよアメリカの場合ね。それもありますけど、それはまた別にしても、貯蓄率が下がり、若い層が反発が非常にきついカッコウで行われたというのが経済のパフォーマンスに大きな影響を与えました。馬鹿にならんことですよね。だから、戦争っていうのは、やっぱり被害が出るんです。それから、もう一つの被害が、1980年代にソ連が軍事力を強化したからアメリカは頑張ろうとした。で、レーガン大統領が、アメリカ人元気を出して頑張れ、とゆうた。で、私はこれも必要だったと思いますよ。ソ連は折れましたけれど、アメリカが強くなったから折れたんでねえ。だから、アメリカがなんもしなくても、ソ連が自然に変わったというのは、私は甘い考え方だと思いますね。少なくとも、人間っていうのはそれほど先読めませんもの。今から10年前っていうのは、ソ連が強そうに見えた。だから、レーガン大統領は頑張った。頑張ったときに、彼はやっぱり、まっとうな人間じゃなかったところがありますね。……というのは、軍備をするためには税金を取らないけません。僕は、これは、次に申しますけれど、政治家を判断するときに、税金を取るという政治家がいい政治家であって、税金を取らないという政治家はまやかしだと思ってください。税金を取らないなどという話はないんですから。政府が何かをやるためには必ず税金を取らにゃイカンのですから。でしょ。レーガン大統領は、減税をします、軍備を強化しますと。それが、通ったんだから不思議なもんだよね。考えてみれば。………。それ、やった訳です。それが巨大な財政赤字を生みました。1980年代にアメリカはいっぺんに債権国から債務国になった。日本は逆なんですね。………。だから、私はソ連のことを、今でも憎んでも憎み足らんという気持ちがちょっとすることがあるのは、なぜ、1973年にデタントがあったときに、ソ連の軍事力を減らさなかったのかね、と。………。そうしてりゃ、レーガンもないし、あのまま平和になったわけやな。………。それをそれから6,7年ソ連が軍事力を増やして、ロケットいっぱい作って、アメリカが対抗手段を(取るまでに至らせて)、おまけにアフガニスタンまで攻め寄った。あれ、1979年の末ですよ。………。アメリカが対抗手段を取って、まあ、言ってみれば、ただで軍事力を増強した。それがね、この最後の10年間の巨大な経済力の変化を生んじゃったわけですね。………。何ということしてくれたんかと思いますよ。あの、…ふたりして。(聴衆の笑い)つまり、ソ連はなぜ、1970年代にバカなことしてくれたんだよ、と。それから、1980年代にアメリカが軍事力を増やすのが必要であったとしても、やっぱりまっとうにな、税金を増やして軍事力を増やすことになぜ行かなかったんだろうかと。………。なんなら、それくらいうちが負担したったかもしらん。ちょっと、オーバーですけど(聴衆の笑い)。あのとき、日本が負担したほうがよっぽど世界のために良かったんですよ、本当に。もしも、アメリカがそう言うて、日本がそうするつもりがあればね。こんなに、アメリカが借金国になって、日本が債権を持つようになったのと比べればどれほどマシか。この喪われた18年ていうのはすごいですよね。実際。1973年から18年でしょ。だから、冷戦っていうのは1947、48年から1972、73年までの26年だったらまだ良かったんだよな。あとの18年のおまけがね。はぁー…(ため息)。なんともいえないものを生み出したと、いう感じが私にはするんですね。それが加速したと。そういう風に考えますと、まあ不思議なことに、ちょっとくらい希望も出てくるんでね。そういう、冷戦と経済成長やったためにアメリカが燃えつきたとすれば、大体復活の可能性があるわけですね。徐々に弱っていって衰えるのが一番悪いわけですから。そうじゃなくて、バリバリと燃えつきたんであれば、また復活するかもしらん。そういう感じがしないわけではありません。だけど、そんなこと考えてるのはね。私は最近の日米構造摩擦でも、前からもう、日本は全部譲んなさいと。良くても悪くても譲れと。理屈の問題じゃないと。理由を簡単に言えばね、アメリカとけんかをしたら、負けると。負けるけんかはしないというのが、政治のABCなんですね。そりゃ、もう意気地ないようにみえるかも、それがAなんだから。負けてもやあやあ我こそはというのは勇ましいかも知らんけど(聴衆の笑い)。それじゃ、政治・外交にならないんですから。勝つか、負けるかがまず大事。その次に、いくら勝ち負けが大事だと言っても、相手がどうしようもなかったら、こりゃ、しょうがないわな。だけど、アメリカは10年位したら戻るだろうと、という風に私は思うところがあるものですから。だから、譲んなさいと。まぁ、譲るようですから結構です。あろうことか、日本の国民がアメリカの方が正しいと言いだした。ちょっと、この頃不安になったのは朝日新聞までそう言い出したから(聴衆の笑い)。戦後、日本は朝日新聞の言うことの逆をして、成功してきたわけですから。ちょっと、俺、まちごうてるかもしらんなと(聴衆の笑い)。あの、思うようになってるんですけど。まあ、それはええとしましょうか。誰でも間違って、合うことがあるわけですから。不思議ですよね。なかなかその意味じゃいいほうにきてると思いますけど。しかしね、私だってそんなに極楽トンボじゃないんですよね。10年したら復活するだろうと。でも、病気はないのかね、と。あるかも知らんのですね。ただ、チェックしとかにゃイカンですよね。あの、協力する相手の精神状態、身体状態いろいろとチェックしとかにゃ(聴衆の笑い)。それは、我々の方にも通用しますから。そこで、チェックリストをいろいろと考えてみたいと思うんですが。ひとつは、繁栄の大きな原因であったところの福祉国家の問題です。福祉国家というのは、これまた経済の論理からすれば非常に簡単ですけど、………。一部の恵まれない人を豊かにするという効果をもっております。問題点を今度いいますよ。いいことだけ言いますからね、今日は。そして、大体のところ所得を平均化する機能を果たしております。そりゃ、今でもそれほど十分に平均化してないけど。もうちょっと平均化したほうがいい国はありますけど、アメリカなんかそうですね。そうですけども。しかし、そりゃ1920年代と比べればアメリカだって所得は平均化しています。その場合にですね、その助けられた人がいいかどうかはここでさておきます。社会全体が利益を得ることは間違いないんですね。なぜなら、所得が平均化するということは、まず第一に購買力が上昇いたします。全体としての購買力が上昇いたします。一部の人がものすごい金持ちで他の人が大方貧乏であったときに売れるものと、大方の人がまあまあ豊かであったときに売れるものは後の方が多いでしょ。着物とか食べ物とかみな同じだからね、大体。あの、需要が。そりゃ、自動車を3台買うか0台買うかだったら違うでしょうがね。しかし、いかに豊かになっても3台買う人は滅多におりませんですしね。それよりは、やっぱり、90%の人が安モンでもいいから1台持つほうがいいでしょ。トータルで購買力が増えますもの。購買力が増える国内で経済成長が出来るということを可能にするわけです。これは、戦争前の帝国主義に対して、資本主義というのは作ったものを自由に売りさばけないから外国に出かけていくと。したがって、国内の所得の分配をもうちょっと均等にして、国内でマーケットを広げていく、国内で成長すべきだという議論がございましたけれど。イギリスなんかそうですね。イギリスの労働党の中道から真ん中の方の議論は大体そういう議論になったんですけど、それにしたがった結果が出たということになるんじゃないでしょうか。そのプラスがまずあります。それから、もう一つはね、偶然不幸な理由によって落ちこぼれそうになったやつを助けるということは、助けられる人にとってプラスであるのみでなく、社会全体にとってプラスなんですよ。だって、落ちこぼれが一人出たらどれだけたくさん手間がかかりますか。我々の常識ですけど、ちょっとおかしな人を一人雇ったらね、これを監視する人がもう一人いて、(聴衆の笑い)、そうですよ、大体。それにまた、事務方が0・何人か要りますからマイナス1よりもっと上行くんだね、大体。であるとすると、何か病気のためにドロップアウトになるとかね。何か突然貧乏になるからドロップアウトする人がなくなるという制度は素晴らしいものなんですよ。………。それは間違いないんです。案外、怪しいのは助けられた人はどうかっていうことであって。多分いいんでしょうけど。助けられた人に対する効果って言うのは100%プラスではありません。なぜなら、助けられた人はね、これは、助けられ癖ができるとか、恨むとか色んなことが起こるからです。………。だから、全体の効果から言えば、恵まれない人を助けるという効果は間違いなしにいいということが出来ます。案外、その目的とされている助けるという、助ける相手ね、それに対する効果は場合によってはマイナスもあるということは知っといたほうが良いかもしれません<<

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